新しい年を無事迎えられましたことを心より感謝いたします。
震災から10ヶ月、被災企業の皆様におきましては、一日も早い復旧に向けて日々努力されていることと思います。
特に、生産設備に大きな被害を受けられた企業においては、設備の復旧に時間と資金がかかり、元の生産能力に戻らないまま操業をされているところも少なくないと思います。
あるいは、生産設備の被害はなくとも、震災復興のために一時的な需要増加に対応するためにご苦労されている企業も少なくないと思います。
震災後の状況をみると、生産能力が以前よりも減ってしまった状態で震災前の売上を取り戻そうとしている企業も、生産能力は落ちていなくとも震災後の需要増に対応するために生産量を増やそうとしている企業も、同じ問題を抱えている可能性があります。
それは、自らの生産能力を超えた注文を受注し、混乱をきたしていることです。
保有生産能力を超えた注文を何とかしようとして無理をすれば、ひずみが生じます。
そのひずみは、納期遅れの頻発、品質問題の発生、残業時間の増加などの症状として現れます。
そして、そのひずみはやがて亀裂に発展します。
売上高を確保するためにたくさんの受注を取ったつもりが、利益が減少し、顧客の信頼を失い、将来の売上まで失うという悪循環に陥ります。
早期復興のためには、多くの製品を、より早く届けなければなりません。
注文があるからには、それをできるだけ早く作りたい、みなそう思っていると思います。
そのための生産能力が足りないならば生産設備を増やせば良いわけですが、そのためには時間がかかる上に、何よりも投資できる資金が限られています。
大規模な被害にあった企業においては、災害前の状態まで設備を戻すだけでも相当の時間と投資が必要ですが、そこまでの資金が一度に工面できるとも限りません。一時的な需要増に合わせて設備増強をしても、数年後に破産するだけです。
このような状況の中では、設備投資をしなくてもマネジメントの方法を変えることで生産量が増やせるならば、それをやらない手はないと思います。
流れ(フロー)のマネジメントが、それを可能にします。
現状の生産体制の中で、一番能力が限られている部分(ボトルネック)を見つけ出し、その部分が最大の生産量を出せるように、他の全ての部分をボトルネックに同期させます。
ボトルネックは、能力が一番少ないからこそボトルネックです。
ということは、他の部分は、必ずボトルネック以上の能力をもっています。これを保護キャパシティと呼びます。
この保護キャパシティをうまく使うことで、ボトルネックの能力を最大限まで引く出すことができます。
例えば、ボトルネック工程の作業員が、次に作業するためのものを前工程のところまでとりに行っている。これから使う部品を探している。
あるいは、ボトルネックの前工程で発生した品質不良によって、ボトルネック工程までやり直しをしなければならなくなる。
オペレーターが昼食を取る間、機械まで止まる。シフト替えの時間に機械がとまる。
このようなことの積み重ねが、ボトルネック工程の時間を無駄にしています。
ボトルネック工程がやらなくて良い仕事を、別のより多くのキャパシティを持った工程が代わりにやってあげる。
ボトルネックの時間をみんなが協力して無駄にしない。
このような方針を見直すだけで、生産量はまだ増やせる可能性があります。
この可能性を最大限に生かした上で、それでも能力が足りないならば、その時にはじめて能力増強が候補となります。
ボトルネックを増強するために投資をすることは、工場全体のパフォーマンスを向上させるために一番効果が高いことは明白です。
ただし、このときにその部分を強化することによって、他の部分がボトルネックになってしまう可能性があります。
その危険を回避し、ボトルネックを一つの場所に留めておくためには、常に他の部分がボトルネックよりも多くのキャパシティを持っている状態を維持する必要があります。
設備投資による改善の際には、このボトルネックの強化と同時に、非ボトルネックの余剰キャパシティの適切な維持が、全体の安定を維持するための大きな鍵になります。
資金が限られている中で設備復旧を行うにしても、何を優先することが一番効果が高いのか、それには工場全体のパフォーマンスを左右するボトルネックの存在を明確に意識しておく必要があります。
設備投資の順番を間違えれば、その損失は計り知れません。
被災企業各社の復旧と、さらには東日本の全体の復興のために、限られた資金をより効果的に活用する上でも、選択と集中のための意思決定は非常に重要です。
TOC(制約理論)によって蓄積された知識が、そのために役立つことを願うとともに、微力ながら少しでもお役に立てる機会があればと願っております。
平成24年1月11日
震災からちょうど10ヶ月の節目の日に。
マネジメントコンサルタント/TOCトレーナー
桂 利治
toshi@ka2ra.jp
http://www.improving-flow.com/
090-4888-3813
参考になる書籍;上記に記載した生産手法(TOC)の原理を学ぶためには以下の書籍をお勧めいたします。小説仕立てになっていますので、ストーリーを楽しみながら原理原則を学ぶことができます。

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