プロジェクト管理において発生するさまざまな問題症状の根本原因は、我々の「不確実性のマネジメント方法が間違っているのだ」という話をすでに書きました。
ここでは、我々の現在のマネジメント方法がどういうもので、何が間違っているのかを明らかにしていきます。
まず、プロジェクトをマネジメントする目的から確認をしておきます。
プロジェクトは何らかの目的を持った活動です。
プロジェクトと一言でいってもさまざまなものがありますが、ここではビジネスにおけるプロジェクトについて話を進めます。
ビジネスにおけるプロジェクトは、お客様と約束した品質・仕様のもの(価値)を、お客様と約束した予算内で、お客様と約束した期限までにお渡しすることが目的です。
ここで「お客様」とは必ずしも社外の関係者とは限りません。
社内のプロジェクトにおいては、その利害の対象となる社内関係者が「お客様」です。
よって、プロジェクトのマネージャーには、お客様と約束した品質・仕様のもの(価値)を、お客様と約束した予算内で、お客様と約束した期限までにお渡しする責任が発生します。
プロジェクトを成功に導くためには、先にも述べた通り、不確実性を上手にマネジメントしなければなりません。
現在、我々はプロジェクトに含まれる不確実性をどのように管理しているのでしょうか?
まずは現状から確認してみます。
「不確実性」とは、予測できない不確実なものですから、その対処のためには適度な安全余裕を見ておくしかありません。
安全余裕として、特に注目すべきものは「時間」です。
時間が足りなくなることによって、品質や仕様の妥協が発生したり、コストのかかる是正措置をとらざるを得なくなるからです。
時間が十分にあれば、品質や仕様、予算は危険にさらされずにすみます。
プロジェクトを不確実性から守るためには、必要十分な時間が用意されていれば良いわけです。
原理原則1;「プロジェクトを不確実性から守るためには、必要十分な時間を用意する」
しかし、この必要十分なだけ準備したつもりの時間が実際には足りなくなってしまうために、さまざまな問題症状が発生します。
必要十分に用意したはずの時間が足りなくなってしまう理由は、安全余裕として確保した時間の配置場所が分散していることに起因します。
すなわち、プロジェクト全体を構成するすべてのタスクに対して、それらを時間通りに終わらせるために、それぞれのタスクに安全余裕を配置することによって、時間が足りなくなってしまうと言うことです。
この行動は、
「すべてのタスクが計画した時間通りに完了すれば、プロジェクト全体も時間通りに完了する」
という仮説に基づいています。
この仮説が正しいならば、各タスクの時間見積もりに不確実性に備えるために必要十分な安全余裕を取ることで上手くいくはずです。
しかし、多くの問題症状が発生しているという事実が証明している通り、残念ながらこのやり方はうまく機能していません。
すなわち、この仮説は無効であることが現実によって証明済みなのです。
しかし、この事実は、不確実性に対処するための原理原則1を無効にするものではありません。
(原理原則1;「プロジェクトを不確実性から守るためには、必要十分な時間を用意する」)
必要十分な時間は個々のタスクを守るために分散して配置するのではなく、
「プロジェクト全体を守るために、安全余裕をまとめて配置する」
という考え方ができます。
統計学の知識によっても、このやり方が有効なことは明らかです。
なぜならば、変動性や不確実性によるばらつきの影響は、サンプル数が増えれば増えるほど小さくなるからです。
一つ一つのタスクが当初の見積期間通りに完了できる可能性は低くても、見積期間よりも長い時間がかかるタスクとかからないタスクがあることによって、ばらつきは相殺され、プロジェクト全体期間で見れば当初の見積期間通りで完了できる確率が高くなるのです。
「母集団(サンプル数)が大きくなると、ばらつきは相対的に小さくなる」
したがってCCPMでは、新しい考え方として原理原則1を拡張します。
原理原則1’;「プロジェクトを不確実性から守るためには、必要十分な時間を用意し、大きなかたまりにまとめる。」
この安全余裕として確保した時間を「バッファー」と呼びます。
ここで次のような疑問が浮かびます。
各タスクのばらつきが全体で相殺されるのであれば、個々のタスクに安全余裕を持たせても、全体に集めても、同じように機能するのではないか?
しかし、残念ながら事実はこれを否定しています。
なぜ、個々のタスクに安全余裕を持たせても、全体としてばらつきが相殺されることがないのか、その答えはプロジェクトにもともと備わったシステム上の特性と、プロジェクトを実際に行う人間の行動特性によって説明されています。