一人の人間が同時に複数のタスクを処理することは無理なので、複数のタスクを抱えた人は何らかの優先順位に従ってタスクを順番に処理します。
CCPMでは「バッファーへの影響度」によって優先順位をつけることをすでに書きました。
あるリソースが複数のタスクを同時にこなさなければならない状況を「リソースの競合」と言います。
※リソース;タスクを処理するために必要なスキルや能力を持った人間、機械などの事をいう。
計画されたタスクをすべて処理するに十分な(数の)リソースが用意できれば、リソースの競合は発生しません。
しかし、現実のプロジェクトではリソースの競合は各所で発生し、先に述べた人間の行動特性(「締切りにあわせて仕事をする」)に伴なう悪影響を助長しています。
これはすべてのプロジェクトに対して、リソースがまったく不足しないレベルまで準備することは、現実的には不可能であることを示しています。
プロジェクトの実行時にリソースの競合が発生する、すなわち、計画されたすべてのタスクを処理するために十分なリソースが用意できない主な原因は2つです。
一つは、計画時点でリソースの利用可能性を考慮していないこと。
もう一つは、計画したスケジュール通りには各タスクは進まないこと。
まず、計画時点でのリソース利用可能性の考慮について詳述してみます。
プロジェクト計画の際に、もっとも重要な管理ポイントとして導き出したクリティカル・パスは、タスクの依存関係によってすべてのタスクをつないだ場合の最も長い経路です。
この段階では、まだリソースの利用可能性は考慮していません。
したがって、プロジェクトに含まれるいくつかのタスクが、リソースの競合によって同時進行できないのであれば、それらのタスク間におけるリソース競合を解消しなければ現実的な計画とは言えません。
リソースの競合解消には通常二つの方法が用いられます。
一つは、片方のタスクに新たな代替リソースを割当てる方法です。
もう一つは、両方のタスクで同じリソースを使うために、タスクの開始タイミングをずらす方法です。
前者は、品質上の問題や追加コスト等の問題の発生がないならば、プロジェクトの期間を長くしないで済むため、より好ましい選択肢と言えます。
後者は、同時進行するはずだったタスクを順番に処理するようにずらすことで、プロジェクトの全体期間が長くなる、すなわち、クリティカル・パスよりも長い経路が発生することがあります。
これをクリティカル・パスと識別するために、「クリティカル・チェーン」と呼ぶことにしています。
クリティカル・チェーンは、クリティカル・パスに含まれるリソースの競合を解消した、より現実的な最長経路です。
クリティカルチェーンを特定することは、人間の問題行動を計画段階から組織的に解決しようという決意の現れとも言えます。
クリティカル・チェーンがあるならば、プロジェクトの管理上の最重要ポイントは、クリティカル・パスではなくクリティカル・チェーンになります。
そのため、原理原則2’は以下のような表現に変わります。
原理原則2’’;「クリティカル・チェーンを守るために、安全余裕(バッファー)をクリティカル・チェーンの後ろと統合ポイントにまとめて配置する。」
クリティカル・チェーンを特定することで、ある一つのプロジェクトの中で発生するリソース競合は解消しました。
しかし、現実の環境では、すでに実行されているプロジェクトを含む複数のプロジェクト間でもリソース競合の解消が必要です。
リソース競合が多数のプロジェクト間で問題となるようなリソースを「クリティカル・リソース」と呼びます。
複数のプロジェクトを同時進行するためには、クリティカル・リソースの競合を解消しなければ、現実的な計画になりません。
特に新しいプロジェクトの計画においては、既存プロジェクトでのクリティカル・リソースの利用予定を考慮して、新たなプロジェクトの約束納期と開始タイミングを調整する必要があります。
明らかなクリティカル・リソースがない場合でも、同時進行するプロジェクト数が増えれば増えるほど、リソースが競合する可能性が増えてしまうので、同時進行するプロジェクトを適切な数に保つことは必要です。
以上より複数プロジェクトが同時進行する状況に関しては、次のことが言えます。
原理原則4;「プロジェクトを同時進行できる数は、リソースの利用可能性を考慮して決める。」
続いて、プロジェクトの実行時にリソースの競合が発生する原因の2番目、計画したスケジュール通りには各タスクは進まないことについて詳述します。
一般的に、いくら詳細な計画を立てたとしても、未来を完全に予測することは不可能なため、プロジェクトの実行時には必ず計画からの逸脱が発生します。
その結果、計画段階でいくらリソースの競合を解消したとしても、実行段階では必ずどこかで競合が発生します。
実行時に発生するリソース競合は、すでに述べた通り優先順位を明確にすることによって解消します。
原理原則3’;「バッファーへの影響度が最も高いタスクだけに集中する。」