前章に書いた通り、タスクの見積もり時間を”挑戦的”にすることによって、当初見積もりの実に半分もの時間が取り出されました。しかし、一つ一つのタスクをその短い時間で完了できる可能性は理論上50%しかありませんから、単純にこの挑戦的な見積もり時間を積み上げただけでは、プロジェクト全体の期限(納期)を守れる可能性はほとんどなくなってしまいます。そのため、プロジェクト全体の期限(納期)を守るために保護時間を置く必要があります。これは原理原則1’ですでに書いた通りです。
原理原則1’;「プロジェクトを不確実性から守るためには、必要十分な時間を用意し、大きなかたまりにまとめる。」
一つ一つのタスクを遅れから保護するという考えを捨てて、プロジェクト全体を遅れから保護するという考え方を取り入れます。
タスクの見積もりを前章の通り”挑戦的”にしたならば、元々の見積もり時間の半分が保護時間(バッファー)として使える状態にあります。すなわち、タスクの実行期間と同じ長さの余裕期間を持つことになります。例えば、元々の見積もりで1年のプロジェクトに対してタスクの時間見積もりを挑戦的にすると、タスクの実行期間が6ヶ月、保護期間も6ヶ月ということになります。保護期間が半年!?「これでは保護期間が長すぎる!」と感じるのではないでしょうか?
実際に納期を守るための保護期間はこれほど長くは必要ありません。CCPMの標準知識体系によれば、ほとんどの場合は集めた保護期間の半分あれば足りるとしています。先の例で言えば、タスクの実行期間が6ヶ月、保護期間はその半分で3ヶ月で良いということです。結果としてプロジェクトの計画期間は9ヶ月と、当初の1年より25%短縮されることになります。
保護時間を半分で十分であることは経験によって検証された事実から得られたTOCの知識ですので、なぜ半分で良いのかを数値的に明快に説明することは残念ながら私にはできません。
保護時間をもともとの半分にしても納期が守れてしまうのは、実行管理方法にその秘訣が隠されています。
CCPMはその計画方法の目新しさから計画自体に注目を浴びてしまいがちですが、計画はあくまでも計画です。実行されなければただの意図に過ぎません。実は、CCPMの実行管理の仕組みにこそ、プロジェクト管理の根本問題を解決する本質が散りばめられていることが正しく伝えられていないように思います。
保護時間が半分でも納期を守れるようになってしまう驚くべき実行管理の仕組みについて、そのエッセンスをいくつか上げてみます。それぞれの詳しい説明は長くなるのでまた別の機会にします。
1)タスクへのリソースの配置は、バッファーの消費によって統一的に決まる優先順位に従って行う。(←優先順位を明確に決める)
2)リソースは実行中タスクが終わるまで、他のタスクに着手しない。(←マルチタスク禁止)
3)タスクには期限の指定はなく、手をつけたらできるだけ早く終わらせる。(←期限に合わせて行動するのを防ぐ)
4)プロジェクトには、プラン(計画)はあるがスケジュール(日程計画)はない。(←日程、期限に合わせて行動するのを防ぐ。従うべきは優先順位。)
5)タスクの実行に必要なものは、その開始日までにすべて揃えておく。(←準備ができていいないものは着手禁止)
6)実行中タスクの完了予測を毎日行い、管理者に報告する。(←タスクの完了をすぐ報告、後続タスクの準備開始判断)
7)バッファーの消費に、すべての関係者が責任を負う。(←バッファーを介したチームコミュニケーション)
8)プロジェクト内で解決できない状況をタイミングよく察知し、マネジメントが必要なサポートをする。(←マネジメントの注意力を高める、不必要な介入の防止)
実行管理がきちんと機能すれば、大抵のプロジェクトは保護期間(バッファー)を消費し尽くさずに完了することができます。
このように保護期間(バッファー)を半分にできるのは、プロジェクトの実行管理方法の改善が前提条件にあることを忘れないようにしてください。
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