個々のタスクに時間的な余裕を配置してもプロジェクト全体を守るための安全余裕としては機能しないのはなぜか?その2つの理由のうち、システム上の特性についてはすでに説明しました。
ここでは、2つ目の理由;人間の行動特性について説明します。
プロジェクトにおいてタスクを実行するのは人間です。
したがって、人間の行動特性は、プロジェクトの実行に対して大きな影響を及ぼします。
この人間の行動特性の中で特に注目すべきものは、
「人間は締切りにあわせて行動する」
というものです。
この特性は「パーキンソンの法則」と「学生症候群」によって説明されています。
※パーキンソンの法則;与えられた時間と予算はぎりぎりまで使い尽くされてしまうこと
※学生症候群;期限のある作業を行う際に、余裕時間があればあるほど、実際に作業を開始する時期を遅らせてしまうこと
したがって、こういう行動特性があることを前提としてマネジメントする必要があります。
プロジェクトにおいて、人間がこのような行動をとってしまう原因は二つあります。
一つは「タスクに期限が設定されている」ことです。
もう一つは「ひとりの人が複数のタスクを同時に処理している」ことです。
同時進行する複数のタスクを処理しなければならないとしても、すべてを同時に処理することは無理なので、現実的にはなんらかの優先順位をつけて順番に処理します。
通常は期限が迫ったものほど優先順位を高くするため、タスクには期限が必要です。
複数のタスクを同時進行することが常態化している場合、新しく開始するタスクの期限を設定するためには、そのタスクに必要な時間だけでなく、すでに進行中の既存タスクの処理にかかる時間も考慮しなければなりません。
また、上司や顧客の圧力あるいは突発事項で、いくつかのタスクに超特急の期限を設定せざるを得ない場合には、その超特急タスクの期限を守ることによって他の既存タスクに悪影響が及びます。
したがって、いろいろな現実的な状況を加味して、そのタスクの実施に必要な正味時間よりも長い期間で約束するのが、責任感ある人間のとる常識的行動と言えます。
しかし、残念ながらこの責任感ある常識的行動の結果、パーキンソンと学生症候群が発生しプロジェクトの時間が浪費されます。
タスク遂行のために実際に掛かる時間よりも長い期間が与えられてしまうからです。
他の着手済みのタスクを終わらせるために、新しいタスクの着手を遅らせ(学生症候群)、期限が迫ってからようやく着手し、期限を一杯に使って終わらせます(パーキンソンの法則)。
以上より、このような人間の行動特性による悪影響をなくすためには、「タスクの期限をなくす」とともに「優先度の最も高い一つのタスクに集中できるようにする」ことが有効であることがわかります。
原理原則3;「優先度が最も高いタスクだけに集中する。」
優先度の最も高いタスクが完了したら、リストを吟味しその時点で最も優先度の高いタスクを実施する、この繰り返しです。
期限は必要ありません。
目の前の仕事をできるだけ早く終わらせるだけです。
この原理原則3を実際に機能させるためには、優先順位付けの統一的なルールが不可欠です。
タスクの優先順位を決定する基準となるものは、プロジェクトにとって最も重要なものであるべきです。
プロジェクトにおける最も重要な管理ポイントがクリティカル・パスであり、それを不確実性による遅れから守るために安全余裕(バッファー)を置くことはすでに書きました。
したがって、タスクの優先順位は、安全余裕(バッファー)に対する影響度によって自動的に決まります。
すべてのタスクは依存関係によってつながっていれば、それぞれのタスクの遅れがどれくらいバッファーを消費するのか(プロジェクトを危険にするのか)は誰の目にも明確にわかります。
よって、原理原則3は以下のように発展されます。
原理原則3’;「バッファーへの影響度が最も高いタスクだけに集中する。」
プロジェクトにおいて、人間の行動特性による時間の浪費をなくすためには、期限を基準にして仕事を進めるのではなく、バッファーへの影響度を基準に、一つ一つの仕事に集中して仕事を進めることが必要なのです。